各シリーズのエピソードの構成
実は、TRICKは「1」「2」「3」とシリーズ共通して、エピソードの順番には意味がある。
エピソード1は、“TRICKの自己紹介”である。「母の泉」「六つ墓村」「言霊」は、いずれも初めて見る人には奈緒子&上田の自己紹介
を、今までのファンには久しぶりのご挨拶をしているのである。
次のエピソード2は、“矢部と奈緒子の絡み”である。「瞬間移動」は少々違うが、「まるごと消えた村」「時間の穴」はまさしく、矢部&奈
緒子の冒険と言えるのではないだろうか。
そしてエピソード3は、まさに“核であり、山”である。最終話を除けば一番の核であり、山であるのは間違いない。「遠隔殺人」「サイトレ
イラー」「老人ホーム」と、どうだろうか?どれもが各シリーズごとの名作なのではなかろうか。作り手が格別の脚本を用意しているのは間
違いない。
エピソード4は、“軽妙な気休め”である。だがここで、最終話の話も持ってくる必要がある。最終話での上田はいつになく、頼れる存在
である。「1」でも前エピソードである「千里眼」とは大違いであり、「2」でも「お告げ者」で塚本恵美に惑わされていた上田とは大違い、「3」
でも「亀山歌」で千鶴にチヤホヤされていた上田とは大違いである。ここまでくると、最終話に向けてエピソード4には意図的に軽いエピソ
ードを持ってきているとしか考えられない。
これは、ちょうど音楽アルバムのCDにもよく見られる傾向で、アルバムのメインディッシュの曲の一つ前の曲には、少し砕けた、いわ
ゆる捨て曲を持ってくるのである。この効果は絶大で、仮に3最終話の前が「亀山歌」ではなく、「老人ホーム」だったらどうであろうか?
「2」最終話の前が「お告げ者」ではなく、「サイトレイラー」だったらどうであろうか?
TRICK全シリーズのエピソード3には、終わり方がシリアスという傾向があり、続けて最終話を持ってくると、重くなりがちである。そこで
エピソード4を持ってくる事により、リセット&リフレッシュ効果が見出せるのである。もちろん「千里眼」「お告げ者」にはダークなエンディン
グもあるが、エピソード全体としては軽妙なのではないだろうか。
つまり、各シリーズのエピソードの順番にはある法則を見出すことが出来、すなわち、その並び方には綿密な計算がなされているので
ある。