最後の審判(TRICKという名の悪戯)
TRICKは放送前のテレビ雑誌では、『最後の審判(仮)』というタイトルであった。しかし、最終調整で現在の『TRICK』に変更された。
そこにどのような経緯があったのかは知る由もない。ただ一つだけ言えるのは、『最後の審判』というタイトルにはTRICK本来のテーマが
込められていたという事である。
ここからの話は、TRICKは「1」で終わりだった、という事を前提に進める。なぜなら、『最後の審判』というタイトルを考えていた時には
製作側は「2」があるなど考えても見なかっただろうから。
TRICKの中で奈緒子は、偽霊能力者達のインチキを暴く事で、彼らに“審判”を下してきた。しかし、最終的には「実は自分こそが、本
物の霊能力者である」という審判を下されたのである。これこそが、まさに“最後の審判”である。
ところが、このタイトルは直前に『TRICK』に変更され、奈緒子が霊能力者なのかも謎のままになってしまった。これは続編を意識したの
かもしれないし、奈緒子を完全に霊能力者だと決めつけたくなかったのかもしれない。しかし、本当に『TRICK』というタイトルには、単にミ
ステリーの“トリック”の意味だけであって、“最後の審判”のような意味はないのであろうか?
そもそも「TRICK」という単語には、「騙す手段」、「たくらみ」、「策略」の意味がある。しかしそれだけではない。第二の意味として、「い
たずら(悪戯)」という意味もあるのである。このいたずらは、「子供達のいたずら」が当てはまる。ちょうどハローウィンの「Trick or treat!
(もてなしてくれないと、いたずらするぞ)」が、それである。
TRICKにもやはり、大きな“いたずら”が一つ存在する。霊能力者を裁き、追い求めていた奈緒子が、結局は自分自身がそれだったと
いう皮肉、つまり、運命の“いたずら”である。
これが堤監督をはじめとする製作側が、“TRICK”というタイトルに込めた本当の意味なのではないだろうか。